炭水化物ダイエット、効果あるの?


主食を減らす炭水化物ダイエット、効果あるの?


運動せずに糖質制限を続けると、病気にもつながりかねません

 炭水化物や甘いケーキなど糖類を控える「糖質制限」ダイエットを、お手軽な減量法として取り入れている方は多いようです。小渕内閣で官房長官を務め、すでに政界を引退している野中広務さん(86)も3か月で9キロの減量に成功したことを同僚記者が紹介しています(5月3日付本紙解説面)。

 また、近年、糖尿病患者を診断してきた医師たちが糖質制限食や糖質ゼロを勧めるダイエット本を次々に出版したことや、メタボ中年男性たちが糖質制限ダイエットに取り組んで成功したという体験談の本が注目を集め、6月には民放番組でも取り上げられました。ただ、こうしたハウツー本の中には、「運動しなくても確実にやせる」とうたうなど、偏った食事だけによるダイエット法を強調する、危うい側面も見受けられます。

 減量は食事と運動のバランスを考え、食事の総カロリーだけでなく、食品を選ぶ必要があります。炭水化物・たんぱく質・脂質の3大栄養素とビタミン、ミネラルの配分を念入りに検討し、体作りを行うことが大切です。

 体内のエネルギー源となる栄養素の一つ、炭水化物をカットすると、バランスが崩れるのは当然でしょう。エネルギー源が不足すると、筋肉を動かす力が足りなくなるため、瞬発力を欠いたり、動きが低下したりすることにつながります。脳の働きも鈍くなります。新陳代謝が低下し、便秘気味になることもあります。

 では、その危険性はどういったことでしょうか。

 ハーバード大学などのグループは、こうした食事を長期間続けると、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中になる危険性が高まるとの研究結果を英医学誌に発表しました(7月7日付本紙)。また、日本糖尿病学会の門脇孝理事長(東大病院長)は、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」と警鐘を鳴らしています(7月27日付本紙)。

 ただ、炭水化物や糖分が私たちを太らせることは確かですから、摂取方法にひと工夫が必要でしょう。食物が体内に入ると、ホルモンの一種、インスリンが分泌されて、余ったエネルギーが脂肪細胞に蓄積され、体は太ります。インスリンは血糖値が上がるほど、それに応じて分泌されます。血糖値は炭水化物を摂取したときに急上昇しますので、血糖値が上がらないよう、その摂取方法が大切なわけです。そこで、同じ炭水化物といっても、血糖値上昇の度合いを相対的に表す「GI値」(グリセミック指数、ぶどう糖を100とする場合の相対値)の低い食品を選ぶことが勧められています。GI値の高い白米や白い食パンを避け、玄米や五穀米、そば、スパゲティなどに置き換えていくのがコツです。砂糖の代わりに人工甘味料を使うことも有効です。

 こうした食事の工夫も運動と併せて行うことで、効果を発揮するでしょう。十分な筋力をつけたうえで、筋肉量を維持しながら体脂肪をそぎ落としていくために、炭水化物の摂取量を変化させる手法があります。ここからは一歩進んだ応用編です。

 筋トレと有酸素運動を組み合わせながら、一時的に数日間、炭水化物の摂取を制限したうえで、1日だけ大量の炭水化物を摂取し、体内に変化を起こさせるやり方です。ボディービルダーたちが、減量期の体作りに取り入れていますが、その応用です。私もこの方法を習って、筋肉量を落とさずに、体脂肪をそぎ落とすよう努力しています。いわば、体の内側(=炭水化物摂取量)と外側(=運動)から刺激を与えて、体脂肪の燃焼につなげようというやり方です。減量は緩やかで、ちょっと焦りも覚えますが、体脂肪率は低下してきています。体重の変化を見ながら食事内容や運動内容を順次、変えていく方法なので、それぞれのメニューに細心の注意を払いながら行うトレーニングですね。その食事の摂取量や運動プログラムは個人差があるので、信頼できるトレーナーに指導を受けながら取り組むとよいと思います。
(調査研究本部主任研究員 笹島雅彦)

(2012年8月6日  読売新聞)


読売オンライン 主食を減らす炭水化物ダイエット、効果あるの? より